↓ NATIONAL GEOGRAPHIC日本版サイト より
群れにいる魚はどれも同じ顔ばかりと思われるかもしれない。
けれども少なくともこの魚は、別の種はもちろん、仲間の魚まで見分け
られることがわかった。
ニセネッタイスズメダイ(Pomacentrus amboinensis)は西太平洋の
サンゴ礁に生息する魚で、紫外線が見えない人間の目には、全身が
黄色で数個の斑点があるように見える。
けれども、紫外線が見えるニセネッタイスズメダイの目には、仲間の顔
の複雑な模様が見えている。
その模様は個体ごとに異なっていて、このスズメダイはそれを識別
できるというのだ。
↓ ナショジオではニセネッタイスズメダイのキャプションが付いて
いるのですが、ネッタイスズメダイのような・・・
今回の研究で実験チームを率いたクイーンズランド大学(オーストラリ
ア)のウルリーケ・ジーベック氏は、「この模様は、私たち人間と同じく
紫外線を感知できない動物には見えません。捕食者に気づかれること
なく魚たちがコミュニケーションをするのに役立っていると考えられ
ます」と語る。
(参考記事:「【動画】体を点滅させて言葉を交わす巨大イカ」)
人間がこの模様を見るには、紫外線だけを通すフィルターをカメラに
つけて魚を撮影すればよい。
ジーベック氏らの実験から、体長わずか9センチのニセネッタイスズメ
ダイが、同じ種の仲間や、よく似た別種のネッタイスズメダイ
(Pomacentrus moluccensis)の顔を識別できることが明らかに
なった。
8月にオーストラリアのケアンズで開催された国際行動学会「Behaviour
2015」で予備的な実験結果を発表したジーベック氏は、「私の目には
ほとんど変わらないように見える顔のパターンを魚たちが非常に正確
に識別していることに驚きました」と語った。
特定の顔を見つけたら報酬
ジーベック氏らは、実験室で飼育しているニセネッタイスズメダイに、
特定の顔の模様(額に縞があるなど)を見せたときに報酬となる餌を
与えるようにした。
「水槽の中や後ろにターゲット(顔写真)を置き、特定のターゲットの方
に泳いでいったときに餌を与えるようにしたところ、魚はすぐに餌を
もらえるターゲットを選ぶことを学習しました」とジーベック氏は言う。
「最初のうちは、顔の模様の写真を印刷してラミネート加工したものを
見せていましたが、最近では、水槽の後ろに置いたパソコンの
モニターに映し出しています」
(参考記事:「アシナガバチ、互いの顔を見分ける」)
研究チームは次に、2種類の顔の模様をニセネッタイスズメダイに見せ
て認識能力をテストした。
一つは選択すると報酬をもらえる模様、もう一つは魚が見たことのない
模様だ。
模様の組み合わせをいろいろ変えてテストした結果、ニセネッタイ
スズメダイはほとんどの組み合わせを識別できた。
同じニセネッタイスズメダイの顔だけでなく、よく似たネッタイスズメダイ
の顔も見分けられることもこの実験でわかったことだ。
識別を難しくするため、複数の魚の顔を混ぜた画像で同じ実験を
繰り返してみたが、これも正確に見分けることができた。
ニセネッタイスズメダイは群れで暮らす社会性動物であるため、顔を
認識する能力は、個体を識別し、絆を結び、それを維持するのに
役立つのだろう。
研究チームは、魚の顔の模様には健康状態や社会的地位に関する
情報も含まれているのではないかと考えているが、この点については
まだ検証されていない。
↓ 4匹のニセネッタイスズメダイの顔の写真
人間並み「あいまい識別」も
オーストラリア国立大学の生物学者ヨッヘン・ツァイル氏は、この実験
は、動物によるパターン認識と利用に関する「すばらしい具体例」だと
評価する。
ツァイル氏はこの研究には参加していないが、「動物の個体認識に
おける色や明るさのパターンの重要性については、ほとんどわかって
いないのです」と言う。
「実験結果は二つの点で意外でした。まず、これらの模様が紫外線で
しか見えないこと、さらに魚たちがこの詳細な模様に注目していたこと
です」
(参考記事:「同じ顔が2つないのは進化の産物」)
実験チームを率いたジーベック氏も、魚の顔認識が人間の顔認識に
ここまで似ているとは思っていなかった。
なぜなら魚の脳には、人間が顔認識に使っている部位がないからだ。
例えば、複数の顔の模様を混ぜる実験では、あいまいな模様について
はニセネッタイスズメダイが「カテゴリー知覚」という方法で認識して
いることが示された。
つまり、この魚は人間と同じようなやり方で、よく似た写真の違いを
知覚できるのだ。
ジーベック氏は、「カテゴリー知覚は、動物が映像や刺激について迅速
に判断することを可能にすると考えられています」と説明する。
「向こうからくる動物が捕食者なのか無害な動物なのかは、自然界
では生死にかかわる問題です」
人間のカテゴリー知覚に関わる脳部位がないニセネッタイスズメダイ
が、どのようにしてカテゴリー知覚を行っているのかは、まだわから
ない。
ただ、ジーベック氏は「多くの魚の顔には異なる模様があり、そうした
模様は特に紫外線で目立つため、ほかの種の魚も個体を識別できる
のかもしれない」と語る。
映画『ファインディング・ニモ』で離れ離れになったクマノミの親子も、
こうやってお互いを認識したのかもしれない。
ニセネッタイスズメダイ
・・・条鰭綱スズキ目スズメダイ科ソラスズメダイ属
体長:8~9㎝
太平洋西部(沖縄含む)のサンゴ礁に生息
1匹の成熟した雄と数匹の雌で群れを作ります。
生まれた時は雌で、一部が雄へと性転換します。但し、幼魚の
姿を保ち、群れに紛れる雄も存在します。
藻類や動物プランクトンを捕食
胸ビレの付け根に有る黒色斑が大きいのでネッタイスズメダイ
と区別出来ます。
観賞魚としても飼育されます。
↓ Wikipedia より(以下2点)
↓ 幼魚。背ビレの眼紋が特徴
ネッタイスズメダイ
・・・条鰭綱スズキ目スズメダイ科ソラスズメダイ属
別名:ヒカーグアー(沖縄名)
体長:5~9㎝
太平洋西部(沖縄含む)からインド洋のサンゴ礁に生息
小さな群れを形成しますが、他のスズメダイの群れに紛れる
事も。
幼魚の姿は成魚とほぼ変わりません。
藻類や動物プランクトンを捕食
観賞魚としても飼育されます。
↓ Reef Eco Tours.com より
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